トラック産業の将来を考える懇話会・近畿
第10回セミナー
トラック産業の将来を考える懇話会・近畿が第10回セミナーをTKPガーデンシティーPREMIUM心斎橋(大阪市中央区)で開催しました。
「トラック料金問題の課題、構造、対策」 藤井聡氏講演
極寒のなか、企業・労働者・労働組合の総勢88名が参加し、講師には京都大学大学院教授で大阪都構想に反対し、テレビなどメディアで活躍され「トラック運送業の適正運賃・料金検討会」の座長でもある藤井聡氏を招き、「トラック料金問題の課題、構造、対策」と題し講演を受けました。
冒頭主催者挨拶では「まず今年一年懇話会の活動にご協力をお願いします。懇話会は昨年11月近畿運輸局に出向き、様々な要請を行いましたが、今後トラック業界は激変していくだろうと思います。労使が一体となりセミナーなどで学習し、懇話会が業界にとって必要とされる会にしなければいけない」と挨拶されました。
規制緩和による価格競争
講演で藤井聡教授は、規制の合理性、自由化のメリット不正義の研究、運輸業界の規制については15年前から特別委員や大学で研究されています。「トラック業界も規制緩和で自由化となり、参入業者が増加し下層多重構造しました。あくまで自由化したことが善であるという社会構造の中で規制緩和以降ダンピングや価格競争が起きました。」
「規制緩和以前、全産業と比べ30万円ほど多かった大型トラック運転手の年収が、2015年度では50万円以上も少くなりました。バス・タクシー業界は規制緩和の見直しがなされたが、トラック業界は燃料サーチャージなど取り組みが進んでいません。
増加する過剰サービスによる負のスパイラル
また、労働者の賃金が下がることで労働環境が劣化し高齢化や長時間労働の増加に繋がることは当然のことです。」 「時代のニーズにより、近年増加しているネット通販に悲鳴をあげている業者が多く存在しています。送料無料・翌日配送など過剰サービスの横行で積載率が下がっていることが原因のひとつです。
過剰なサービスは企業の経営悪化と労働者の低賃金・長時間労働に繋がり、若年労働力が集まらない魅力のない業界に拍車をかけました。」 「本来デフレになると消費が減り人余りになりますが、長期的なデフレは人手不足になります。その原因は荷主・消費者の要求でサービスレベルの高度化が進み、採算が合わない輸送を強いられます。
企業は競争に勝つために、さらに運賃コストと労働者の賃金を下げることを優先します。1%の大企業だけが利益を上げていますが、産業全体では大赤字で、この仕組みを変えるためには、規制強化しなければいけません。」 「トラック運送業の適正運賃・料金検討会では、もっと自由化を進める動きがあります。
トラック業界では、アマゾンなど大手が送料無料当たり前とすることでマーケットがブラック化しています。何らかの規制があれば運賃・料金のバランスを崩すことはなかったでしょう。」 「トラック業界のみならず日本の産業全体が20年以上に及ぶデフレの継続により、あらゆるマーケットで過剰サービス(価格以上のサービス提供)が横行し、企業の収益と労働者に賃金を下げています。
最低限の料金を支払わない荷主に規制強化は必要
この状況を改善するためには、過剰サービスを規制していくことが必要不可欠です。そうでなければ過剰サービスを続けることが出来る一部の大企業だけが生き残り、まともであっても中小零細企業は淘汰される(悪が栄え善が滅びる)ということです。」
「トラック業界を良くするためには料金(運賃)の適正化と自由化が善で規制強化が悪であるという、世の中の空気を変えなければいけません。この空気の中で規制強化は困難ですが、最低でも基本運賃とは別に高速料金の上乗せや燃料サーチャージ、付帯作業の料金の収受は必要でそれを支払わない荷主に対して行政指導などの規制は必要です。」と訴えました。
企業と労働者は対等な立場に
セミナーのまとめとして事務局長は『「トラック産業の将来を考える懇話会・近畿のセミナーも10回を迎え、自由主義なのか、保護主義なのか、必要なことは規制をかけなければいけない。自由という言葉に騙されず企業・労働者が対等にしていくことが重要で、展望をもって懇話会を拡大し、連携した取り組みで産業を変革しましょう』と呼びかけました。
第10回セミナー終了後、同会場内で懇親会を行い、初めて参加した企業を含め、企業と労働者が交流を深めました。