「トラック産業の将来を考える懇話会・近畿」
近畿運輸局交渉
2016年11月18日、大阪市中央区の合同庁舎13階会議室で「トラック産業の将来を考える懇話会・近畿」が国交省・近畿運輸局と、事前に提出していた要請書に対する回答交渉を行いました。
「懇話会」側は企業5社・労組8名、計13名に対して近畿運輸局側は自動車交通部貨物課、自動車監査指導部監査課、自動車安全部保安環境課各1名、以下8名、計11名が対応しました。
まず、出席者がそれぞれ自己紹介、続いて事務局長が今回の要請書の趣旨説明を行い、7項目の個別要求に対して近畿運輸局側から回答がありました。
個別要求に対して運輸局側からの回答
<Q>
「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」を法制化すること。
休息時間は11時間以上とすること。
<A>
自動車運転者の労働時間については「改善基準告示」で定めている所管 が厚労省にあるので今後本庁を通じて上申していく。処分の厳格化で「告示」の違反が再発の場合、過労等事故が起きれば即「30日間の事業停止」 会社の存続も危うい処分を課している。
休息時間については「告示」で基本的に拘束時間を13時間以内としてい る逆算すれば「10時間以上の休息が取れる」となっている。しかし、長距離運行等もあるので、「週に2回は15時間を超えてもいい」という弾力的なケースをとっている。この「告示」は平成元年中央労働審議会で労使合意のもとで定められた。目的は労働条件の向上を図ること。 この「基準」を理由として現労働条件を低下させてはダメ、繁忙期や休日出勤して も日数を下がらないようにすること。
事業者はこれを最低の基準とし、「基準」を上限とせず努力してもらいたい。また、最低遵守すべき「基準」で あると認識させるため、新規事業者講習会、運行管理者講習会を通じて指導を行っている。今後この「基準」の時間については本庁を通じて厚労省 に上申していきます。
<Q>
トラック事業者が適正な運賃収受ができるように事業法63条の主旨に基づき、原価計算を基にした車種・業種別標準運賃を策定すること。
<A>
中央でトラック運送業の「適正運賃・適正料金検討委員会」が設置され、そこで議論していくこととなる。しかし、運賃 を業種別で設定するのか?標準・上限・下限を設定した時の矛盾など、いろいろ意見があり「検討委員会」でアンケートなど調査を実施し今後の方向を決めていく。
貸し切り バス(関越道・軽井沢)事故での運賃の問題を受けてトラック運送業は運賃議論を再度始めた。今後、「運賃検討会」の議論の内容に注目している。 今回の要請内容は本省に伝えます。
<Q>
トラック運輸産業における多層構造の下位に位置する小規模の事業者が現場の共通認識であり、事業規模の拡大による経営の安定化が業界の底上げにつながることから、中小事業者の協業化促進に必要な措置を講ずること。
<A>
事業協同組合参画の啓発を行っている。本年7月、中小企業等経営強化法 が改正され、経営力向上の支援策として貨物自動車運送事業独自の事業分野別の指針を策定し、経営力向上計画の認定を行うなど適正な事業運営に向けた措置を行っている。下請法の見直しは内閣府を中心に政府全体で取り組まれている問題である が、運送業界では荷主を巻き込み、適正取引を行った上で下請問題をどう考えるのか議論を進めていく。中央でも問題視されているので、今後ヒア リングなどが実施される。
<Q>
重大事故発生の原因である運行管理義務違反、過労運転及び整備不良違反 車両の運行並びに社会保険未加入等、違法事業者を根絶するため行政に従 わない事業者は事業の免許取り消し等の法整備と行政指導を強化するこ と。
<A>
運行管理義務違反、点呼・アルコールチェックの無実施、過労・整備不良運行は大きな事故につながる。これらは守るべき最低の基準であることを事業者が充分理解する必要がある。特に運行管理義務違反と著しく遵守さ れてない過労運転は重く受けとめ、安全確保に支障に直結するという恐れのある重要な違反と捉え、30日間の事業停止。3年以内の同一事業所 で同一違反に対しては事業許可取り消しの罰則強化を行っている。 「行政に従わない業者の免許取り消し」の要望は本省に上申します。
<Q>
「車両台数5台割れの事業者にも運行管理者の選任が義務づけられること」 とされたが、そもそも5台割れは「事業の遂行上適切な計画を有する」条件を満たすものとは言えない。よって参入時の条件を満たさない事業者で 一定期間経過しても改善が見られない場合は、営業許可を取り消すなど罰 則すること。また最低車両台数を20台に引き上げること。
<A>
5台割れ事業者に対しては当然支局の窓口で指導し、5両割れの場合は事業の休止・廃止を奨めている。昨年は32事業者で改善が図られた。 「5台割れ事業者の運行管理者の義務づけ」は、安全のための基準の遵守 であり、引き続き指導していく。最低車両台数の引き上げについては10 台か?20台か?既存事業者をどうするのか?業界がまとまっていないので現状のままとなっている。重要な問題と認識しているので本省に報告し ます。
<Q>
関係行政と連携し、告示から罰則強化を伴う法規制を行うこと。
<A>
「改善基準告示」は最低の基準であると事業者が認識することが前提です。 国交省と労働局の相互通報を行っている。これを端緒に、特に多い告示違 反(1日16時間超え、拘束320時間超え、8時間休息)の監査(件数 は監査全体の1割)を実施した。今年8月から健康診断未受診も相互通報 の対象とした。「運送事業者は荷主に比べて立場が弱く解決しにくい」と いう業界の声が多く、改善のため平成18年から過労運転と荷役作業による労災防止を荷主団体対して、郵送文書で協力依頼している。今年は運輸局長と労働局長が荷主団体の主立った所に要請文章を直接手交した。過労運転防止の具体策として、安全運行を確保するため、発注条件の事前明確化、急な条件変更の自粛、ドライバーの休憩・到着時間を考え、手待ち時 間短縮などに対し配慮を求めた。今回の要望は厚労省と情報を共有し、と もに中央へ上申します。
<Q>
国土交通省で開催されている「運賃・料金検討委員会」での討論経過を開示すること。
<A>
H・P等で議事概要・資料・次第が出ている。今年7月開催の中央協議会の場で「検討会」の報告がされた。「検討会」の委員は有識者の学者・独 禁法に詳しい弁護士・行政、オブザーバーに全ト協・荷主団体となってい るため、今のところ非開示となっている。概要だけは開示されているので、 これをもって情報公開としている。申し入れ内容を本省事務局に伝えます。
この後、近畿運輸局の回答に対して懇話会側から意見・質問を行いました。 今後引き続き、継続した懇談を要望し近畿運輸局交渉が終了しました。